夫が突然別居したいと言い出して…。夫婦仲が悪くなり別居をしている。
現在様々な理由で別居している夫婦は少なくありません。
家庭内別居を含めると相当な数になるでしょう。
そこで出てくる問題が「別居中の不倫」です。
同居中の不倫と別居中の不倫には何か違いはあるのか。
この記事では、別居期間中の不倫について解説していきます。
目次
別居期間中の不倫は許されるのか?
結論から申し上げますと別居期間中の不倫は許されません。
別居期間中も離婚しない限り、当然夫婦関係(婚姻関係ともいいます)が続いています。
不倫は「不貞」と言って、夫婦関係を破綻させる行為であり、民法でも離婚できる原因として定めています。
そのうえ、不倫は配偶者を裏切る違法行為であり、不倫した配偶者は慰謝料の支払い義務もあります。
ですが例外として、「夫婦関係の破綻(はたん)」が認められれば、不倫をしても違法行為にならない(慰謝料支払い義務が発生しない)場合もあります。
夫との別居による夫婦関係の破綻
では、どのような場合に「夫婦関係の破綻」が認められるのか。
4つのポイントを説明していきます。
ポイント① 離婚する前提で別居している
明確に離婚を前提として別居をした場合は夫婦関係が破綻していると判断されることが多いです。
離婚が前提ですと、当然ですが夫婦で婚姻関係を続けていく意思が無いことになります。
そのためこの場合の別居状態ですと、不倫をしても違法行為にならないことがあります。
ポイント② 長期間別居している
長期間別居が続いている場合も夫婦関係が破綻していると判断される場合があります。
別居期間が長ければ長いほど、夫婦関係を続けていく意思が無いということになります。
ですが、具体的にこのくらいの別居期間で夫婦関係が破綻していることになるという基準はありません。
しかし、1年未満の別居期間では夫婦関係が破綻しているとは判断されにくいです。
目安として5年以上の別居期間であれば、夫婦関係が破綻していると判断されやすいでしょう。
ポイント③ 別居中に夫婦間の交流が無い
「別居中に夫婦間で会わない、一切連絡をしていない」「別居中の生活費はそれぞれ自分の分は自分で支払っている」
このような別居期間が続いている場合も夫婦関係が破綻していると認められる場合があります。
夫婦間で共同生活をしていく意思が無いと判断されるからです。
しかし、この場合も別居期間がある程度続いている状態で夫婦関係が破綻していると認められることが多く、短い別居期間では認められにくいでしょう。
ポイント④ 別居後に離婚を協議している。離婚調停をしている。
別居期間中に離婚を協議していたり、離婚調停中である場合も夫婦関係が破綻しているという判断材料になります。
離婚協議や離婚調停は、夫婦間で離婚するために行動していることになりますから、婚姻関係を継続する意思が無いとされやすいです。
この場合ですと離婚間近であると思われますので、何か行動を起こすのであれば急いだほうがいいでしょう。
夫と別居中でも夫婦関係が破綻してないケース
反対に、別居していても「夫婦関係の破綻」が認められにくいのはどんな状態の時なのか。
5つのポイントを説明していきます。
ポイント① 離婚を目的とした別居ではない
離婚を目的としていない別居は夫婦関係が破綻しているとは認められにくいです。
例えば、「夫婦関係が悪くなって、一時的に距離を置くために別居した」というケースであれば、将来的に夫婦関係を続けていく意思はあると判断されます。
この別居状態で不倫してしまうと「不貞」ということになり、夫婦関係を破綻させる行為をしたことになります。
当然、同居中の不倫と同じく、慰謝料の支払い義務が発生します。
ポイント② 別居期間が短い
別居を始めて間もないのであれば、夫婦関係が破綻しているとは認められにくいです。
別居期間が短いうちは、夫婦関係が回復する見込みがあると判断されます。
こちらも、具体的にこのくらいの別居期間でという基準はありません。
目安として、1年ほどの別居期間であれば夫婦関係が継続されていると判断されるでしょう。
ポイント③ 別居中でも夫婦間で交流がある
別居期間中でも生活費や荷物の受け渡しなどで、定期的に夫婦間で交流している場合は夫婦関係が破綻しているとは認められにくいです。
定期的な交流があれば、お互いに夫婦関係を回復させる意思があると判断されます。
また、直接会うことがなかったとしても、定期的に連絡を取り合っている場合なども同じく、夫婦の交流があることになります。
この状態で不倫をすれば「不貞」となり、慰謝料の支払い義務が発生します。
ポイント④ 単身赴任や両親の介護等を理由とした別居である
単身赴任や実家の両親の介護のためなど、明確な理由で別居する場合は夫婦関係が破綻しているとは認められにくいです。
これらの理由で別居をしても一時的な別居であり、また同居を再開する意思があると判断されます。
夫婦関係の破綻とは全く関係のない理由での別居は、同居している状態と変わりはありません。
夫婦間で離婚を想定した理由での別居ではないので、この状態で不倫をすれば「不貞」となります。
ポイント⑤ パートナーの一方的な別居である
「一緒にいたくない」などの理由で、パートナーが一方的に始めた別居の場合は夫婦関係が破綻しているとは認められにくいです。
夫が強引に家を出て行ったとしても、妻が「戻ってきてほしい」「また同居をしたい」という意思を持っていれば、当然お互いに離婚の意思があることにはなりません。
たとえ、この状態で離婚調停を申し立てたとしても、不成立となり離婚できる可能性も低いでしょう。
一歩的に別居を始め、離婚調停を申し立て、不倫をするのは自分勝手な行動であり、「不貞」となります。
家庭内別居期間中の夫の不倫
「家庭内別居」とは、夫婦が同居している状態でありながら、お互いにコミュニケーションをとらず、それぞれが自分のライフスタイルで生活している状態です。
家庭内別居中であっても、夫婦関係が破綻しているとみとめられる場合と認められない場合があります。
長期間続いている家庭内別居であったり、お互い離婚する意思があり、離婚調停中であったりと、明らかに夫婦関係の回復が見込めない状態であれば、夫婦関係の破綻が破綻していると判断されるでしょう。
ですが、そのような家庭内別居は少なく、例えば、「夫婦仲が悪くなり、会話もしたくないから家庭内別居をしている」という場合などが多いです。
家庭内別居は別居に比べて、よほど明確に夫婦間で離婚に合意している状態でない限り、不倫をすれば「不貞」と判断されるでしょう。
まとめ
別居中の夫の不倫が不貞となるのか、「夫婦関係の破綻」が最重要ポイントになります。
この記事を読む前までは、「別居してとっくに冷め切った夫婦仲だから」と別居中の夫の不倫に対して、何もできないと思っていた方も多かったのではないでしょうか?
別居をしている夫婦でも、そう簡単に「夫婦関係の破綻」とは認められにくいのが現実です。
また、同居している状態で、「ただ会話をしなくなった」ですとか、「ご飯も寝室も別にしたから、これは家庭内別居だ」など、自分では「夫婦関係の破綻」だと思ってもそうではないのです。
その別居の理由や期間、夫婦関係修復の可能性など、様々な状況によって「夫婦関係の破綻」というのは認められます。
どんな別居状態であっても、充分に夫の不倫が不貞と認められる可能性はあるのです。
まずはあなた自身の今の別居状態を振り返ってみましょう。